
フジ・メディア・ホールディングス(HD)が発表した「ハラスメント根絶宣言」は、一見すると企業文化の改革を目指した決意表明に見える。しかし、その実態は、過去の人権問題を巡る批判をかわし、企業イメージの回復を狙った戦略的な動きにすぎないのではないか。
まず、全社員に宣言への署名を求めるという施策は、表面的な誓約の強要であり、ハラスメントの根本的な解決には何ら寄与しない。そもそもハラスメント問題は組織の構造や企業文化に根ざしたものであり、署名ひとつで解決できるような単純なものではない。もし本気でハラスメント防止に取り組むのであれば、具体的な再発防止策の導入、内部通報制度の抜本的な強化、加害者への厳格な処分といった実効性のある施策が必要不可欠である。
加えて、清水賢治社長が全社員に向けて説明した「再生・改革案」も、問題の本質に向き合ったものなのか疑問が残る。過去の不祥事に対して、経営陣はどれほどの責任を取ったのか。組織構造の再編やアナウンス室の独立は、企業体質の改善にどう結びつくのか。その説明は極めて不透明であり、実態として経営陣が自らの責任を棚上げしたまま、表面的な改革を押し出しているようにも映る。
企業の信頼回復は、一時的なキャンペーンや宣言では達成できない。実際に職場でのハラスメントを防止し、社員が安心して働ける環境を構築するためには、経営陣の覚悟と透明性が必要だ。フジテレビが本当に「根絶」を目指すのならば、改革の本質を見失わず、組織の隅々まで行き渡る抜本的な施策を打ち出すべきだ。現状では、その決意が企業イメージの維持に偏っているようにしか思えない。
ハラスメントは企業イメージの問題ではありません。従業員一人ひとりの精神的健康に大きな影響を与えます。ハラスメントの相談窓口は社内だけでなく、社外の相談窓口も有効です。ぜひ、さくら相談の「つながり相談室」を活用してください。